状況が全く理解出来ない私は、その白い煙に目を細めながらも目の前の男性に声を掛けた。



「あ、あの……月島省吾さん?」


「あ?お父さんだろうが。」


「お、お父さん?……あの、私なんでここに?」


「住めりゃ良いって言っただろうが。」


「…………。」



確かに私はそう言った。

だけれどこれじゃあ、双子との父親との約束を破る事のような気がしてならない。

双子の父親は、援助は一切無しだと言った。

私はもう一人になるのだと。


ここに住まわせて貰えるのは正直有り難い。
だけれどこの人は、双子の父親をボスと呼んでいるからきっと知り合いなはずだ。

それに、月島と言うこの人の戸籍に私を含め、ママもシオンもレオンも入っていた。

月島と言う名前は、ママがこの国に滞在するために用意されたものだという事は、私も知っていた。
だから尚更、目の前のこの人とこの家に暮らす事は、家族の援助に含まれるんじゃないかと単純にそう思った。



「あの……。」


「あ?何か不満でもあるのか?」


月島省吾はそう言って、乱暴に葉巻を灰皿に押し付けた。

ママのタバコの匂いと違うその葉巻の匂いは、なぜかすごく嗅ぎ慣れなくて少し不安になる。