翌朝目を覚ましたのは、誰かが部屋の扉をノックした音が耳に聴こえてきたからだった。

私は重たくなった瞼を何とか開いて、ゆっくりと身体を起き上がらせた。


途端にくらくらと目眩をおこしたけれど、軽く目を閉じてそれが治まるのを待った。
そうしていると、もう一度部屋の扉がコンコンと音を立てる。

返事を返すために口を開きかけたけれど、なぜかとても喉が渇いていて声が出せなかった。

するとカチャリと音がしたと思った瞬間、扉が静かに開いた。

私が視線を向けてみると、そこに居たのは見たことのある女性だった。

だけれどその女性は起き上がっている私を見て、少し驚いた表情を見せた。



「起きていらっしゃったのですね。」



そう言って私の方に向かって歩いて来ると、その人は昨日から私の腕に刺さったままの点滴を調整して、そのまま私の手首を掴んで脈をとる。


昨日から意味の分からない事だらけだったので、今更その人に興味すらもわかなかった。

ただその人の声は、なぜか耳に心地良いハスキーボイスだった事にほんの少し安心した。
綺麗な黒髪をサイドだけ長めに切り揃えて白い首を斜めに隠していたけれど、後は綺麗なうなじが見えている。


ちらりと脈をとるその人を見ると、うっすらと髪に隠れた首に小さな刺青を入れている事に気が付いた。
一瞬しか見えなかったので、それが何の刺青かは残念ながら分からなかった。