先生2人の自己紹介も終わり一段落ついたところで今度は、俺が今後の時間割や学校生活においてのプリントを生徒たちに配布し、吉川先生はそれに沿って話を進め始めた。






自分の役目が終わった俺はすぐさま1ーⅭと書かれた生徒の名簿をこっそり開き出席番号23番の欄を見る。








夢に出てきた彼女は左から4番目後ろから2列目の席に座っていた。








左の一番前から出席番号順に座っているため、どこの席に座っているかで出席番号は一目瞭然なのである。













1番から目線を落としていき、23番でぴたりと止まる。






そこには







野々宮ことは(ののみやことは)








と記されていた。










名簿から顔を上げ”野々宮ことは”を再度確認する。








夢で自分へと向いていた彼女の視線は、今進行を務めている吉川先生へと向けられている。


ただそれだけなのに胸の奥に少しの違和感を覚えた。











その視線を俺だけに向けられないものだろうか













「では次に、小田先生よろしくお願いします。」






そんな吉川先生の言葉を境に、生徒たちの視線は一斉に俺へと注がれる。






もちろん、野々宮ことはの視線も俺へと移され、







その瞬間ばっちりと目が合ってしまった。







やっべ…







望んでいた事とはいえ一気に現実世界へと引き戻されるとはまさにこのことだ。

客観視が可能にとなった俺の脳は何を考えてるんだと自分自身に避難の声を浴びせた。







「えー、明日の時間割について伝える」







コホン、と一つ咳払いをして目線を少しずらし立て直すと、朝礼の後吉川先生に任された生徒達の自己紹介についての段取りを進める。







「明日はクラスのみんなに1人1人自己紹介をしてもらう。
今から白紙の紙を配る。そこに氏名、誕生日、星座、血液型、などなど。なんでもいいから自分の紹介したい項目を好きなだけ書いてこい。
ただ一つ注意点。1人当たり5分は話してもらう。いいな?覚悟してろよ?できるだけたくさんネタを集めてきたほうが賢いだろう。」









そう伝えると何人かの生徒は自己紹介や5分という言葉一つ一つに落胆の色をみせた。







「で、それが終わったら委員決めだ。休もうったってそうはさせねぇぞ
明日休んだ奴に何の委員になるか決定権はない。すべて俺の独断と偏見によってクラスのみんなが避けて残ってしまったかわいそうな委員のどれかになる。」










今落胆してるのはどうせ、こういうのに消極的なほうがかっこいいと勘違いしているバカどもだろうが、
俺のクラスにきてそんな甘えたくそみたいな考えが通用すると思ってんじゃねーぞ?











含み笑いを浮かべた俺の頭上で授業の終了を知らせる鐘がタイミングよく鳴り響いた。









「じゃっ、そういうことだ。しっかりやれよ」







その言葉とともに俺は教団の上からおり吉川先生とかわると、教室の右側からまた声をあげる。







「明日クラス委員が決まるまでは俺が号令をかける。

起立、礼」






俺の声に合わせて礼をする生徒を見届けると、吉川先生は早々と教室から出ていった。






「じゃ、おまえら
明日楽しみにしてるからな〜」







そう告げて教室の生徒たちに背中を向け手をふると俺も吉田先生を追うように教室を出た。







俺への憎しみを込めた男の文句と、俺に心を動かされた女の歓声を背中に受けたが構うことなく足を進める。







そう言えば、この後職員会議だっつってたっけな。







ったく。どんだけ会議好きなんだよ。







まぁ、
副担任になったからには色々めんどくさくなる覚悟が必要だというわけだ。








ため息をつきながらチラリと腕時計をみた。






会議はお昼休憩をはさんでその後からだからあとかるく1時間は余裕がある。






………。








「…意外と余裕あるじゃねぇか。」







おもわずそう呟くと、頭を乱暴にかいた。








多分余裕がないのは俺だ。







いや、しかたがない。…と、思いたい









今朝夢に出た女の子が目の前にいた。









その事がどうしても俺の頭を占領する。








どうにか追い出そうと、他の事で頭を埋めようとするも、

なぜだか
どうも上手くいかない。












…………。









あー、もうクソ野郎