「ほらついた。
立てる…?」
野々宮の家につくなり、
芹に車をつけ、そう聞く。
だが、返事がない。
パッと野々宮を確認して見ると、
シートの上で眠ってしまっていた。
眉間にシワが浮かんでいるところを見るとそうとう辛いんだろうということがわかる
仕方無いな…
家まで運ぶか…。
俺は再度アクセルを踏み車を走らせると
近くのパーキングエリアに入った。
あまり長い時間路上駐車もしてられないだろう。
車を停めると、すぐ運転席から降りて助手席のドアを開けた。
教室から保健室に運んだときの様に野々宮の背中に手をいれる。
と…
「う…ん………」
野々宮は身じろぎをしながらゆっくりと目をあけた。
「あ、調度いい。鍵は?」
今まさにだっこしながら鍵は探せないなと思っていた所。
野々宮はカバンを漁ると鈴のついた鍵を俺に渡した。
「はい、俺の肩に手かけて。」
そう促すと「ん…」と言って俺に言われたとおり手をまわした野々宮。
嫌に従順な野々宮に俺のテンションはスコーンと上がる。
今のは反則技だろ。
よいしょ と一声かけると野々宮をお姫様だっこで持ち上げた。
「…わっ」
「ん、…?どした??」
「だっこなんですか?」
俺にしがみつきながらそう聞いてくる野々宮。
「そうなんです。」とだけ答えると野々宮の家に向かって足を進める。
頼むからこれ以上耳元で囁かないでくれ。
そう心の中でこぼしながら野々宮を家に運ぶことに意識を集中させる。
