ガラガラ…
扉の開く音にたま先生が帰ってきたかと思いパッと顔を上げる私。
だが、目の前に居たのは
以前私が落としてしまったノートを拾い集めてくれた男の人だった。
「あれ?
この前の…大丈夫?体調悪いの?」
ギシッと音を立て、
その男の人が私の寝ているベッドの端に座る。
「あ…はい…。」
先生じゃなかった事に落胆しつつそう答えるとその人はニコッと笑った。
「俺、3年の神山智哉。」
「自己紹介まだだったからさ」と笑った彼の笑顔はなんだかキラキラしててきっととってもいい人なんだなと思わされる。
「君は?」
「あっ…1年の野々宮ことはです!」
急に振られた質問に焦って答えると「よろしくね」といって笑ってくれた。
ノートを拾ってくれたときもそう思ったけれど、とってもいい人だなと思う。
先輩を前に体を起こすべきだとも思ったが、頭が重たくてそうもいかない。
「起きなくて大丈夫だよ。」
私の顔を見てそう声をかけてくれる先輩。
見抜かれたのかと思うような先輩の気遣いに驚いているとそれをも見抜いた先輩が笑った。
「ほんと、思ってることが手に取るようにわかる。」
そう言いながら私のほっぺたに触れる先輩。
そんな先輩の手にちょっとした違和感を感じる。
なんだろう…
ちょっといやだ……
「先輩も体調悪いんですか?」
どうしたらいいかわからず、
とりあえず話を逸らしてみた私。
「智哉でいーよ、」
「え………?」
「智哉って呼んで?」
私のほっぺたから離した手を
自分の膝の上でもう片方の手と組みこちらに優しくそれでいて強い視線を向ける先輩。
「えっ…と、智哉……先輩…」
遠慮ガチにそう呼んだ私。
そんな私に笑いかけた先輩は「上出来。」と頭を撫でた。
ガラガラ!
