「じゃあ俺授業行ってくるわ。」










そう言うと私に背中を向けてあっさりと保健室から出ていってしまう小田先生。










私の「あっ…」と小さく漏れた声は届くことはなかった。












あれ?私、なに言おうとしたんだろ…














ただ、お礼を言おうと思ったのか。











それとも引き止めようとしたのか。











うーん。
多分後者かな。













寂しさとか不安が胸を刺すみたいにチクチク痛くて。








……。














お母さんの夢なんて見ちゃったせいだ…











ガンガンと響く頭とやり場のない虚無感に涙が出そうになる。








そんな中…









ガラガラ












「あ、まだ起きてる。」









なぜか戻ってきた小田先生。










考えていた事がバレたかのごとく突然現れた先生にびっくりして目を見開く。






















「先生、授業は…?」











「あぁ、もう行くけど。

保健室の先生にはお前の事報告しといたから。もうすぐ来てくれると思う。


あと、何かあったら俺呼んでって言ってあるから安心して寝な。」











そう優しく笑う小田先生。











そんな先生を前に少しずつさっきまでの虚無感がなくなっていった。











「じゃ、無理しないですぐ呼ぶんだぞ。」










去り際、私の頭をサラッと撫でる。









あ、また行っちゃうんだ…












そんなことを考えたら行って欲しくなくなっちゃって。










「………えっ…?」










自分の頭の上に置かれた先生の手を捕まえるように両手で自分の頭に押さえつけてみる。













「どうした?」










最初は驚いたものの、
手を離そうとしない私に優しくそう聞いてくれる先生。











「離したら行っちゃうんでしょ?」












そう問うと先生は少し困ったような、いや、呆れたような…そんな顔をした。











「ほんとに、鬼かって。」













そう呟きつつベッドの脇にあった回転椅子に腰をかける。















私の熱でボーッとした頭でも先生が呟いた言葉はしっかりと聞こえてくるらしい。








鬼……?















「私鬼じゃないもん。だから行っちゃダメ。」






















「だから の使い方おかしくなってる。」と指摘をする先生。













そしてそう言いながらも俯き私に捕まえられてない方の手で顔を覆った。











「えっと…先生…?」











先生の異変に心配になった私は体を起こし先生の顔を除き込みつつそう問いかける。











だが、











「うるせぇ。寝てろ。」












そう私の頭の上にある手に力を込めて私をベッドに再度倒した。










「わっ」










その反動で離してしまった先生の手。












それをいいことに
先生は回転椅子から立ち上がると「ちょっと待ってろ」とだけ言い残して保健室からまた出ていってしまった。















「病人なんだからもう少し丁寧に扱ってください。」











お布団を口元まで持ってきて小さくそう呟いてみるももちろん先生に届くことはない。









もうちょっといてくれたっていいじゃんケチ。








うぅ、頭痛い…













じわーっと溢れてくる涙に気がつかないフリをして目を閉じて寝ようとする。