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「さむっ」
帰りの電車。
随分暖かくなった春の気温に合わせた温度設定の車内は、雨で濡れたわたし達には極寒の地になっていた。
先程車内に乗り込むなり一番に寒いと言った西谷くんに「大丈夫?」と声をかけたがわたし自身もかなり冷えきっている。
「だいぶ降られたもんね。」
そう言い髪の毛を託しあげる沙奈。
「沙奈様…かっこいいです」
躊躇なくオールバックにさせられた沙奈の前髪。
寒がる様子もない沙奈。
そんな沙奈がキラキライケメンオーラを放ってきたので思わずそんなことをいってしまう。
「いやいや、そこは俺じゃね?」
ズイズイっと私の視界に入り込んで来た西谷くん。
そんな西谷くんの頭を橋戸くんが小突いた。
「いち早く寒がってたのは誰だよ。」
「そーだそーだ!誰なんだ!」
面白がって橋戸くんの言葉に賛成すると西谷くんが「は?何言ってんの?全然寒くねぇし」とスカしてみせた。
それを見てみんなで笑うが、ふと橋戸くんが「てか…」とあからさまに私から視線を背けた。
「ことははセクシー過ぎ。」
そんな彼に疑問がわく私。
別に下着が透けてる訳でもないし…
なんでだ?
「出たな天然。」
自分を見回す私に向かって沙奈がそう言い放つ。
それにはほかの二人が「うんうん。」と揃って首を縦に降った。
「なんなのー」
わからず音をあげる中着いたわたし達の最寄駅。
開く扉。
悶々と悩みながら改札を出るが、
みんなとの帰り道もここまで。
ここからはみんな別々の道で帰る。
それを思い出すと沙奈に振り返った。
「沙奈、今日はありがとうございます。
とっても楽しかったです。」
ペコッと頭を下げる私。
「どういたしまして。」
そう頭を撫でてくれる沙奈。
だが、そのまま言葉を続ける。
「てか、なんかバイバイみたいな流れになってるけど送ってくよ?」
「え!いいよいいよ!遠回りになっちゃうもん!」
両手を前に断る私の手を掴み「こんな無防備な子一人で帰せません。」と私の家の方へと進む。
西谷くんと橋戸くんも当然の如く着いてきた。
「2人まで!雨酷いし、風邪ひいちゃうよ~」
そう抗議するも、「いーのいーの。」「こういう時は甘えなさい。」と、二人に頭を撫でられた。
みんなの優しさに心があったかくなる。
もうみんな大好きだ。
心の中でそう呟いた、そんな時…
