パッケージを開きスプーンを開封すると、プリンをすくい上げ一口でパクッと口の中に入れる。







口の中に広がるプリンの甘味に思わず頬の筋肉が緩んだ。










「おいひぃ〜♡」










片方の手を頬にあて、パクパクとプリンを食べる私を笑顔でじっと見つめてくる先生。












そんな先生に気がついた私は少し恥ずかしくなって食べている手を止めると、「なんですか?」と呟いた。













「笑ってる野々宮が好きだよ。」











小さな私の質問にそんなことを言うから、私は思わずスプーンをポロッと落としてしまった。










「えっ?」










「でもね?」











私の手元から滑り落ちたスプーンを拾い上げながらそう続ける。










「寂しくなって泣いてしまう野々宮を慰めるのも、






落ち込んでしまった野々宮をどう元気付けようかと考えるのも、






全部俺がしてあげたいなって思うんだ」















廊下の時に感じたようなドキドキが私の全身に伝わる。












なにがなんだか分からずに混乱し、「借りがいっぱいできてこき使いやすくなるから?」と聞いてみる。








と、先生は



「バーカ」




とだけ言って続けた。















「俺の前では無理して笑ったりすんなってこと。」












朝洗い流したはずの涙の跡をなぞる様に先生は私の頬に触れる。









「今日、元気無いでしょ」









そう言った先生。

気付かれた事に驚き見開く。


と、同時に気付いてくれた事が嬉しくて、でも恥ずかしくて









「おっお主何者だ」









咄嗟に出た武将口調。










不意を突かれた先生は一瞬びっくりした顔をしたが、すぐ私の肩を支えにする様に両手を置いて笑い始めた。









「お主変なところ素直じゃないでござるな」









またバレてる。









忍法、話変えるの術。











「何者かと聞いておるのじゃ」










「うむ。図が高いぞ、わしは水戸黄門様じゃ。」










「ははーーーーー!」








乗ってくれた先生が水戸黄門だとかいうから頭を下げたのに…










「あほ。」







そんな一言と共に頭をパシンっと叩かれた。








叩かれた所を抑えながら顔をあげる。







でも今更、
なぜか目に涙が溜まった。














「先生…」






それを隠すようにまた下を向く。










だが、「ん?」と先生は次の言葉を優しく待ってくれた。










生徒の事すごくよく見てるんだなって、



気付いてくれるんだなって







本当にいい先生が担任でよかったなって思って、







お礼を言おうとした。








けど、








「なんでもない…です。」






涙を飲み込んでそう答える。








気付かれて悔しかった気持ちがそれを邪魔したらしい。








「はいはい。」

















そんな私をみてククッと笑いながらそう返事をする先生。










うーん、悔しい。










気付いてくれてこんなに嬉しくて。


でもそう思う相手が、私をパシリだなんていう意地悪な先生だなんて。














悔しくない訳がないじゃいかばかやろう。










「なんなんですか。」













そんな子供みたいにむすっとする私にもう我慢できないと言わんばかりに大笑いし始める。














「もうそこまでいくとこっちの台詞だわ。」








訳のわからないことを言う先生を無視した私は





「いつものお返しだ」





と、先生が食べようとスプーンにすくったプリンを横から横取りした。