騒がしい教室を出るとドアのすぐ隣の壁に小田先生が寄りかかっていた。
「何してんの?」
「あ、えっと先生に言われた通り、宿題のノートを集めてました。」
そう答えると。
小田先生は「ふーん」と無機質な返事をした。
「先生、何の用事ですか?」
そう聞き終わるか否か、
先生の右手がこちらに伸びてきたかと思うと、私の左頬をすり抜け、サラッと髪に指を絡めた。
「あんまり無防備だと知らねぇぞ?」
ドキンっ
先生の強い視線に心臓が飛び跳ねる。
なにも答えられないでいる私に先生はもう一歩距離を詰めてくる。
逃げられなくなってしまった私は思わずギュッと目を強く閉じた。
と次の瞬間、
「いたっ」
おでこににデコピンを喰らいました。
あんぐりと口を開けたままの私を見て
「あほ面…」とバカにしながらククッと笑う先生。
状況を理解した私は「もーー!」と頬を膨らました。
この頃先生はこうやってすぐ私をからかう。
ははっと楽しそうに顔の全筋肉を緩ませて笑う先生を前に、
なんだか私まで楽しくなって、バカにされてるのも忘れて一緒に笑った。
すると、先生は満足そうに「うん、そっちの方がいい。」と私の頭を優しく撫でる。
どう言う意味だろうと考えていると、
先生が「あっ、」と何かを思い出したように時計を見た。
「あぶねっ、あと5分で授業始まるし。じゃあな」
今度は少し乱暴に私の頭をぐちゃっと撫でると、そう言い残し足早に次の教室へと向かった。
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3時間目と4時間目もなんなく終え、
はやくもお昼休みの時間。
「よっしゃー!弁当食うぞーー!」と元気な西谷くんと、お弁当の用意をせっせとしている橋戸くんに「先に食べてて!」と伝える。
そして職員室へ向かおうと、ほとんど沙奈と西谷くんと橋戸くんに集めてもらってしまったノートを手にした。
だが、やはり人数分のノートは相当重い。
いつもの3人が「手伝おうか?」と提案してくれたけど集めるのにも協力してもらっちゃった手前、申し訳なくて断った。
