「じゃあお前ら、授業やるから席付けー」
そう言って教台に立った先生。
タイミングよくチャイムが鳴る。
それが鳴り止むのを待って、私は号令をかけた。
「起立、礼」
私の声を合図にみんなが頭を下げ、着席する。
「今日は昨日出した宿題の問題を解説する。
お前らにやらせたのはまだ教えてないちょっと先のところだったんだ。
だから、わからなくて当然なんだ。
難しかっただろ、ごめんな?
でも、頑張って考えてきてくれた分今日の授業は楽しくできると思うから。
あ、やってないやつは別な」
小田先生の授業の前置きに女子たちはうっとりと聞いていたが、
それより先生のイヤミに反応した私達は西谷くんを見てクスクスと笑う。
そんな私達に西谷くんは睨みを効かせた。
「あ、野々宮。みんなの宿題なんだけど、授業が終わったら集めて、昼休みに職員室に持ってきてくれないか?」
「あ、はい!わかりました!」
「じゃあテキストの○○ページを開けー」
小田先生の指示に私は沙奈の方を向いて小声で「今日はお弁当先食べてていいからね」と耳打ちをした。
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「起立、礼」
数学の授業も終わり、私は号令をかける。
そして、小田先生が教室から出ていくなり教室の後ろにもある教卓の前に立つと
「ここに数学の宿題を提出してください!」
と、ジャンプしながら手をあげてみんなにアピールした。
「今なら野々宮ことはの握手付きだよーーー!!!」
いらないプリントをメガホンにして隣でそう叫ぶ沙奈。
私の「えっ?!」
という声は届くことなく、みんな…特に男子が光の早さで教室の後ろに集まってきた。
「野々宮さん、僕と握手して!」
「いや、ちょっ俺が先に提出したから!!」
「や、野々宮さんその前に俺とキスを…!!」
もうなぜかハチャメチャな事をいう男子生徒に「あの、えっと…」と、両手を前に出し少しの拒絶と最高の引き釣り笑顔をむける私。
それを聞くなり西谷くんと橋戸くんが叫んだ。
「あんのアホ沙奈!何言ってくれてんだよ!」
「そうだ!俺らのことはが汚れるだろ!!!」
人混みで通れず、
みんなの後ろの方でそうやんややんや講義をしている西谷くんと橋戸くん。
その声に、「は、はは…いや、こんな集まるとは思わなくて、や、早く集めた方がいいかと…つい…」と、珍しく沙奈が少し困惑の色を見せていた。
と、そこに
小田先生がひょこっと現れる。
「野々宮、ちょっと集合。」
そんな一言を聞き私は、開放されるという少しの安心を覚え「はい!」と、返事をするとみんなの間をすり抜けて先生の元へ行った。
