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KOTOHAside









行ってきます。











そう言い残して帰ってこなかったお母さん。










「ただいま」の言葉は、









いつ聞けますか?












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ピピッ ピピッ






「ん……っ」












聞きなれた目覚まし時計の音に目を少し開けると、その隙間から朝日が入り込んできた。











眩しさに耐えられずもう一度目を閉じる。










嫌な夢見ちゃったな…












久しぶりに見たお母さんの顔。











私のお母さんは、私が中学2年の時交通事故で亡くなった。












1つため息をつくと、体を起こし「んー」と伸びをする。









気持ちが乗り切らないまま洗面台に向かうと、鏡にうつった自分の顔を見て初めて泣いていることに気がついた。


















あぁ、もう!
情けないぞことは!!!














勢い良く冷水を出すとそれで顔を洗う。












ひぇー冷たいっ












まださみしさの残る心に気付かないフリをして頭の中で「冷たい」を連呼しながら学校に行く用意をせかせかと始めた。









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「こーとはーーー!」









「沙奈!おっはよーー!」












沙奈とは入学式の次の日たまたま会ってからというもの、通学路の途中にある公園で毎朝待ち合わせをして登校している。









「昨日数学の宿題出たじゃん?難しくなかった??」












「あー、難しかった。
小田先生スパルタだよね〜」











あ、そういえば昨日先生とお話した時に聞けばよかったな…









帰ってきて一生懸命やった事に今更ながら少し後悔する。










そう沙奈と何気ない会話をしながら学校へ向かう。












と、その途中で西谷くんと橋戸くんが待っているのが見えた。













「あれ?!礼仁と亮太じゃない?」










沙奈の声に「うん、」と同意すると、向こうも私達の存在に気付き驚く様子もなく手を振ってきた。










「ことは、沙奈、おはよ」









そう挨拶をする西谷くんに
「なんでいるの??」
と、問うと橋戸くんが答えてくれた。





「2人がいっつも一緒に教室くるからずるいよなってなって、待ち伏せしてたんだ」















「言ってくれれば待ち合わせ場所教えたのに!」













私がそう言うと、西谷くんがクッと泣き真似をした。











「ことは…、なんて優しい子なんだ…!
昨日ことはがいないときに沙奈に聞いたんだ、その時なんて言ったと思う?」










そう聞かれましても…











チラッと沙奈の方を確認するとイタズラそうに「だってそうじゃん」と笑っている。










答えない私の代わりに橋戸くんが教えてくれた。












「ストーカー紛いのあんた達におしえるわけないじゃん。」












それを聞いて私は思わず笑う。










「ストーカーって…
沙奈面白すぎ」












笑う私を見て2人は「笑い事じゃない!」と声を揃えた。















「ちょっと戻ったあそこの公園だよ!」









笑いながらそう教えると「あー、ことはダメじゃんストーカーに教えちゃ!お母さん言ってるでしょ?!」










と、母親風に沙奈がふざけて説教をしてきた。