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KOTOHAside










「何してんの?」







そんな言葉に振り向くとそこには、




さっきまで話していた小田先生の姿があった。










私の肩を力強く掴む知らない男の人の手を解くと、私を先生の後ろにやり男の人が見えないように壁になってくれる。









まだおさまらない不安に
思わず先生のシャツを後ろからギュッと握ってしまう。











そんな私に気が付いた先生はこちらを見て柔らかく笑った。









「待たせてごめんな?じゃあ行こっか」











知らない男の人は「くそっ彼氏と待ち合わせだったのかよ」と悪態をつく。











だが、諦めた様子はない。











「こんなおっさん辞めて俺にしなよ」









ニヤニヤと不躾に笑う口元に恐怖と嫌悪感を感じギュッと目を閉じると同時にシャツを握る手にも力がはいる。










諦めない男の人に先生はため息を1つつくと、シャツを握っていた私の手を引きくるりと車の方に向かった。











「おい、しかとしてんじゃねーよ」










そう叫ぶ男の人を他所に進む先生。










ついには先生の車の助手席に私を押し込めた。








「ここで待っててね」









そう言い残すと、先生はギャンギャン叫びながらついてきていた男の人の元に戻っていく。









何か言い合っているようだ。







だが、それもすぐ終わった。








男の人はバツが悪そうな表情でその場から立ち去ったのだ。











とぼとぼ立ち去る背中に皮肉るように手を振った先生は満足そうにこちらへと戻ってきた。









「大丈夫?」









運転席に入るなりそう私に問う先生。

















「大丈夫です」












先生の姿を確認して、安堵の気持ちが少しずつ広がったのは嘘じゃない。












「ホント…?」










先生は私の顔を除き込みながらそう念を押す。











「本当です!」













「もし嘘だったらまたデコピンするぞ?」









私の前髪をサラリと掻き分けながらそんな事を言う先生。











「えっ、」












先生からデコピンされてしまいそうなおでこを守るように抑える。














先生の全てを見抜いてしまいそうな真っ直ぐな目。












私の気持ちを見透かして聞いてくるような気がする。










「ん?」










優しく微笑みながらそう私の返事を促す先生。







そんな先生を前に





ちょっとだけ首を横に振ってみた。











あーぁ、甘えてしまった。












いつも奥にしまうはずの臆病な感情が少しずつ前へ前へと出てくる。








人に甘えるのなんて久しぶりで、なんだか突然暖かい気持ちになった。















「うん。」











私の返答に満足そうに短く相槌をうつと優しく私の頭を撫でる。