その後、何個かの委員が決まり、次に教科委員の欄に入った。
「じゃあ数学の委員から決める。やりたい奴は手を挙げろ。」
そんな吉川先生の声をきっかけに、クラスの中の女子ほとんどが手を挙げた。
私も挙げなくてはならなかったのかもしれないが、
みんなの気力に圧倒されてすっかりあげるのをわすれてしまう。
これまでの委員の女子がほとんど埋まらなかった理由はこれかと今頃理解した。
小田先生の人気が昨日の今日でこんなに出てしまうとは…
ポカンと口をあけていると、小田先生が四角い箱を持って横から出てきたかと思うと、教卓の上にその箱をおいた。
「みんなの話聞いてたら日が暮れちゃいそうだから、こんな事もあろうかと女子全員の名前が書いてある紙が入ってるクジを作ってきた」
しれっとそんなことを言う小田先生。
自分の女子からの人気を把握しているとこあたりが癇に障ったらしく、男子からブーイングが起こる。
「まぁ、そう僻まない僻まない。
じゃあ引きまーす」
男子を鎮めると、そう言って箱に手を入れた。
ゴクリと唾を飲み込むクラスの女子たち。
小田先生の手によってパッと取り出された1枚の四つ折になっている紙切れ。
それを広げるなり、そこに書かれている名前を読み上げた。
「野々宮ことは」
「えっ?!?!」
驚く私に小田先生はそのくじの紙をこちらに見せピラピラと揺らすと、「おめでとう」と私ににっこり微笑んだ。
私、手挙げてないのに、と思いつつ周りを見ると女子たちが項垂れていた。
やっぱり本当にやりたい人に変わってもらうかと悩む。
だが、そんな彼女たちを構うことなく一人の男子が「はーい!」と手をあげる。
それは橋戸くんだった。
「俺、数学の教科委員やりまーす。」
笑顔で立候補する橋戸くん。
だが、そんな彼を見て他の男子もみんなで手をあげ始めた。
「俺が、俺が」と、ひしめき合う男子を見て、とうとう小田先生は男子にまで人気がでてしまったのかと私は驚きを隠せない。
そんな私を他所に小田先生はその騒ぎを一言であしらった。
「仕事少ないし野々宮だけでいい。男子いらない。」
「はぁぁぁぁあああぁぁあ?!」
男子からあがるブーイングに先生は耳を塞ぎ、また教室の端へとはけていく。
それを見届けた吉川先生は1つ咳払いをすると、また委員決めを続けた。
