委員決めは、もちろん
一番上から行われていく。
一番上に書かれているのは生徒会として動く委員"クラス委員"だ。
このクラス委員が各クラス、そして各学年から集まり生徒会が成され、その中で生徒会長などが決まっていくシステムらしい。
沙奈がさっきのお昼休みの時にクラス委員になりたいと言っていたのを思いだす。
「じゃあクラス委員やりたい奴、手挙げろ。枠は男子と女子1名ずつだ。」
そう促す吉川先生の声を聞くなり、何人かの真面目そうな男子と、沙奈が立候補した。
複数の立候補者がいた男子は推薦制となったが、一人一人みんなの前で一言だけ意気込みを話して、それを踏まえてみんなが手を挙げるだけの簡単なものだったのですぐ決まった。
そして、女子の立候補が一人だけであった沙奈は無事クラス委員になることができた。
決まった瞬間、隣の沙奈が「よっしゃ」とつぶやきながら小さくガッツポーズをするのを見て私も嬉しくなる。
「クラス委員は松村康太(まつむらこうた)と宮野沙奈に決定。」
黒板に二人の名前を書いて私たちのプリントにも書くように促しながら吉川先生は続ける。
「次は体育委員。」
そう聞くなり、クラスの中でも元気そうな男子がこぞって挙手をした。
その中に西谷くんの姿もある。
西谷くんが体育委員になりたいと言っていたのも聞いていたので、心の中で「がんばれ西谷くん!」と応援した。
「じゃあ前に出てこい」
先程と同様に前で意気込みを話すらしい。
挙手をした男子はぞろぞろと前に出ていった。
「俺についてくれば
俺が絶対楽しい体育祭にしてやる。
楽しい思い出つくろうぜ!」
キラーンと光る西谷くんの笑顔とクサイ言葉に思わず私は吹き出しそうになったが、周りの女子たちは揃ってポーっと西谷くんを見つめている。
なんでも西谷くんはクラスの中で一二を争うイケメンらしい。
ちなみに争っている相手は橋戸くんだ。
小田先生ほどではないが、2人とも女子からの人気は高いみたいだ。
立候補者全員の演説が終わると、みんなで多数決が行われた。
吉川先生が一人一人名前を言って、なって欲しいと思う人に挙手をする。
「西谷礼仁ー」
その名前に私は手を挙げる。
隣を見ると沙奈も挙手をしていた。
気に食わなさそうにあげるところがなんとも彼女らしい。
その結果、
一番票を集めたのは見事に西谷くん。
嬉しくて「やった!」と喜んでいると、
沙奈が「今のはほとんど女子はからの人気票だね。」と、あーずるいずるい。なんて付け加えながらボヤいた。
そんなことを言いつつ自分も西谷くんに投票してあげる沙奈はやっぱりなんだかんだ優しい。
「沙奈だいすき〜」
「なによ、急に気持ち悪い」
あ、また気持ち悪いって言われた
沙奈の安定の冷たさを痛感していると、西谷くんがこんな事を言い出した。
「はい!女子誰もあげてないんで、推薦します!野々宮ことはさんがいいと思います!」
「えっ?」
突然名前を呼ばれて驚く私。
だがそれは小田先生によってすぐに阻止される。
「西谷、誰も立候補がいなかった委員に関しては最後に推薦制をとる。
まずはみんなの希望を取るのが先だからな。」
その言葉を聞いて西谷くんは小さく舌打ちをした。
