「あっ……あの!」



 初対面の、しかも男性に手を引かれていると思うだけで、脳内はパニックを起こしそうになる。

 変質者から助けてくれたし、悪い人ではないと思うんだけど、それを差し引いても不安が胸に居座った。


 何も言わないから、何を考えているのかわからない。

 それが、怖い。



(……私はこれからどうなるんだろう。もしかしたら……)



 不安と恐怖が交互に降り積もる。

 頭の中がパンクする寸前、少年が急に立ち止まる。

 慌てて急ブレーキをかけると、掴んでいた手が離れた。



「あまり夜遅くに出歩くな」


「え? ……あ」



 道はちょうど、住宅街に差しかかったところ。

 民家から漏れる明かりが私をひどく安心させる。