「今まで頑張ったね。でも、そろそろ休んでもいいんじゃない?」



 ……やめてよ。

 そんなこと言われたら、隠しきれなくなっちゃう。



「……っ!」



 目頭が発火した。

 これ以上にないくらい熱い。

 流れ出てくるものを止めることができない。


 それなのに若葉くんが微笑んだのが見えたのは、長い指先が優しく涙を拭ってくれたから。

 その優しさが余計に私を泣かせる。

 もう声を押し殺すことができなくなった。



「うっ……ひく……っ!」



 2人しかいない保健室に嗚咽だけが響く。


 強くあるために泣かなかった。

 それなのに、若葉くんの前では泣けてきてしまう。

 強がりで、弱い私を泣かせてくれる――受け止めてくれる。


 彼のような人を、ずっと求めていたのかもしれない。


 若葉くんの指はぐっしょりだった。

 それでも彼は拭うのを止めない。

 私の涙が枯れてしまうまで、その指が離れることは、なかった。