「……どうしろって言うの?」



 声はかすれて、今にも消え入りそう。



「……私は弱い人間だよ。現実から逃げて逃げて、それでも足りなくてウソまでついてる。

 みんなに話しかけるのも、ぶっきらぼうで粗野な振る舞いでしか話せない。みんなが思っている紅林でしか、みんなの前に立つことができない。だって私は……っ」



 一言「私は不良じゃない」と訴えれば、信じてくれた人もいたかもしれないね。

 ……でも、違うの。



「私は、嫌われてたんだよ! 人間としての関わり合いなんて、最初から必要とされてなかった!

 怖がられてるわけじゃないのに、本当の私を見せたらどうなるの?

 弱い私を見せたらきっとみんなは安心する。『何だ、こいつはただの臆病者だ』って。

 そうなったら、私の居場所がなくなる! 私は、それが怖かったんだよ!」