まぶたを持ち上げると、幾つかの蛍光灯と白い天井が目に入った。

 ぼんやりする視界をこじ開け、視線をずらす。


 目にした世界はすべて横たわって見えた。

 私は、ベッドに寝かされていたのだ。



「……紅林さん」



 誰かが私を呼んでいる。

 ……誰だろう。



「紅林さん!」



 必死に呼びかけてくれる声で、やっと目の前の人物を認識する。



「……わかば、くん……?」



 ちいさく問いかけると、若葉くんの顔がくしゃっと歪んだ。



「やっと目が覚めた。……よかった」


「ここは……」


「保健室だよ。様子がおかしいと思って追いかけてみたら、気を失っていたんだ」



 事情を聞きながら上体を起こす。

 まだ残る腹部の痛みが、記憶を思い起こさせた。