「ごめん若葉くん。先に教室帰ってて」 か細くなった声を張り、平静を装う。 「……何かあったの?」 いけない、ダメよ、答えちゃ。 心配そうに訊ねる声へ耳を傾けてしまえば、つい弱気になってしまう。 答えてしまえば、また若葉くんに甘えてしまう。 「……ごめんっ!」 顔を上げずに、走り出した。 「紅林さん!?」 後ろから若葉くんの呼び声が聞こえる。 耳をふさぐ。 聞こえない。 聞こえない。 聞こえちゃいけない。 聞いちゃいけない。