「アンタってホント勇気あるよねぇ、アキ」



 そんなとき、どこからか聞こえてきた名前には、覚えがあった。

 アキ……確か、クラスメイトにも同じ名前の人がいたな。遠藤亜貴さん。


 何気なく壁から顔を出す。

 すると職員室を横切る廊下をちょうど曲がったところで、その遠藤さんが何人かの女子と輪を作っているではないか。



(どうしたんだろ?)



 顔を覗かせた私の耳に飛び込んできたものは――衝撃的な話だった。



「だって、嫌だったんだもん。紅林さんと日直なんて」



 ――聞き間違いであれば、どんなによかっただろう。

 しかしその声は、はっきりと耳に残る。