あからさまな好奇の視線を向けられるのは好きじゃない。

 若葉くんもたくさん嫌な思いをしてきたのだろう。

 その気持ち、私にもわかるよ。

 わかるからこそ、不快にさせるようなことはしたくないって思ったんだ。



「そだ、授業始まっちゃうね。急ごっか若葉くん!」



 今度は私が若葉くんの手首を取る。

 ちょっと驚いたみたいだったけど、若葉くんは笑ってくれた。



「紅林さん、ありがとう」


「いいよ。だってお互いさまでしょ?」


「……うん」



 そのときの笑顔といったら、蕾がほころんだみたいに温かかった。

 これも、窓から射し込む陽だまりのせいだったのかな?