静かにまぶたを閉じると、脳裏に蘇ってくる言葉。


 それは10年前のあの夜、彼女の母に問われた言葉。



『初めてセラちゃんを見たとき、どう思った?』



 当時の僕には、それは衝撃的な言葉だった。


 どう言い表していいのか、わからなかったのだ。



 あの笑顔を見たときから、その存在が頭を離れなくなった。


 一緒にいて楽しいという気持ち以上に会いたい、大切にしたいという気持ちのほうが大きくて、心地よいと感じる場所には、必ず彼女がいた。



 彼女の隣が僕の居場所。


 自覚した瞬間にほかの誰にも譲りたくないという気持ちも湧いた。



 そんなことも全部、もしかしたら、彼女の母に見透かされていたのかもしれない。