「……だーかーら、なんでこんなところで寝ちゃうの」



 登校するなり、机に突っ伏してすーすーと寝息を立てている彼女を見つけ、ため息を漏らしながら席につく。



 規則正しく上下する肩。

 時折ピクリと動く長いまつげ。

 身じろいだ際に滑り落ちた金の髪から漂う、甘い芳香。

 極めつけに、静かな寝息を漏らす、いかにもやわらかそうな桃色の唇。



 無意識のうちに片手を伸ばしていたことに気付き、とたんに居場所のなくなったそれを、ぶすくれた頬に持っていって杖代わりにしてやった。



「僕が今すっごいむなしいってこと、全然知らないで寝ているんだろうね、この子は」



 ちょっと憎らしげに、だけどそっと文句を言った。