「こんな時間に、どうして来たんですかっ!」



 家の前まで来ると、思わず声を荒げてしまう。


 いけない。暴走したらダメだ。


 いまだ痛みを催す目眩に耐え、ぐっと視線を上げる。



「家に帰ったら、セラちゃんがまたソウくんと遊ぶんだって言うから、おかしいと思って来てみたの。……よかった、間に合って」



 僕の前で、胸を撫で下ろす人物。

 彼女は、月と同じ色の髪を持った、あの子の母だった。



「出発は明日の朝よね。どうしてセラちゃんに何も言ってくれなかったの?」



 その質問に口ごもる。

 でも、理由ならちゃんとあるんだから、言わなければ。