「すごくキレイな笑顔っ! お母さんよりキレイかもって思っちゃった!」


「そうなの?」


「そうなのっ! あ、ソウくんはこれから何をするの?」


「僕? 1人だし、何も」


「じゃあ、一緒に遊ぼ。1人じゃつまんないもん!」



 ……たった十数分の外出で、僕が学んだこと。

 満面の笑みの女性に手首を掴まれたら最後。



「ほら、あっち行こっ!」



 抵抗しようとしたって、まぶしい眼差しを前に、すっかりほだされてしまうのが関の山ってこと。


 他人に振り回されている真っ最中なのに、嬉しいと思う僕がいる。

 どんな光よりもまぶしい笑顔につられ、僕は笑った。


 それは偶然だったのだろうか。……いや。


 この子だったからなのだろう。


 堅く閉ざされた殻の内側から『僕』を引き出す少女の存在が、とても深く心に刻まれた瞬間だった。