「家にずっと帰れないわけじゃないでしょ。もう少しで退院だって聞いたわ」 「……えっ!?」 そんなこと、僕は知らない。 何も聞いてない。 「家族と失った時間はこれから取り戻せばいい。あなたは充分若いんだもの。 ただそれまでちょっと時間があるから、どうにかならないかなって、私、あなたのお母さんに頼まれたの」 「それは、どういう……」 退院の話もそうだ。 彼女の言葉を理解しきれなくて、混乱してきたとき。 「お母さーんっ!」 高く、鈴を転がすような声が聞こえてきた。