「僕は1人でありながら、2人なんだよ」


「…………え」


「二重人格とかじゃなくて、一応科学的に証明されているんだけど……」



 考えながら、自分自身の言葉で説明してくれようとする彼を、じっと見つめる。



「紅林さん、『DNAキメラ』って知ってる?」


「……ううん」


「『DNAキメラ』っていうのはね、本来ひとつしかないはずのDNAを、身体のどこかにもうひとつ持っている生命体のこと。

 ……本当は僕、双子のはずだったんだよ。一卵性双生児の逆パターン、っていうのかな。

 あの場合、ひとつの受精卵が分裂して2人になるけど、僕の場合は、ふたつのDNAが早い段階で母親の胎内で融合して、1人になった。

 とても希なケースだから、生まれたときは本当に危なかったらしくて。でも……それだけじゃなかったんだ。

 ……僕には、通常の人間の血が半分流れていない」