さて、と息をつく若葉くんは、ふと思い出したように声を上げる。



「そうそう、頼みがあるんだがいいか?」



 そうして地面に転がる長谷川先輩を指差し、にこやかに一言。



「コレ、どこかその辺に捨ててきてくれるか?」


「「「…………は、はいっ!」」」



 威勢のいい返事をした3人は、協力して長谷川先輩を抱え上げると、見事な呼吸で連れ去ってしまう。


 ……あっという間だった。


 後には私と若葉くんが残されただけ。



「……えーと、よかったの? あれで」


「本気で殴ってないし、目が覚めたら自分の足で家に帰るだろう。曲がりなりにも高校生なんだから」


「……懸念する箇所が違うような気がします」

 
 私の言葉を笑って受け流す若葉くん。

 なんかこう、納得しがたいものが胸につっかえてたんだけど……ふと向けられた琥珀色の瞳に、吸い寄せられてしまう。