「この程度で済んだこと、彼女に感謝しろよ」



 竹刀を下ろしたのち、若葉くんはちらとすぐ脇を見る。

 視線を寄越された朝桐くん、日野くん、和久井くんはピシリと固まってしまう。



「若葉くんっ、3人は悪くないの!」



 強硬手段を取ろうとしたのも、長谷川先輩に画策されたこと。

 友達を思う気持ちは、3人とも本物だ。



「だから……!」


「わかってる。悪いようにはしない」



 ふっと笑った若葉くんは、そのまま3人へと向き直る。



「よくためらってくれたな。何が悪かったのか、それをわかってくれればいい」



 若葉くんの表情は、厳しさを取り去った、やわらかなものだった。