「私はね、若葉くんが思ってるほどいい人じゃないよ。

 さっき割り込んだのも、話があってたまたま居合わせたからやっちゃったようなものだし」


「僕に、話?」


「私のこと……黙っててもらおうと思って。

 最初に会ったときも、さっきも、私の口調を聞いたでしょ?

 私、この学校では不良で通ってるの。こんな髪の色だし、怖いからさ。素の部分だけは、誰にも見られたくないの」



 入学してから、もう1年以上経ってしまった。

 今さら「違う」と言っても信じてくれる保証はない。


 みんなにとっては、あの姿が〝紅林瀬良〟


 これから平穏に暮らすためにも、素顔を知られないことが必須条件なのだ。