少し見上げた先に端正な顔がある。

 でも見つめてくる瞳は、新緑でも茜でもない。


 光が当たらない、変化する前の、本当の色。


 たとえるならば、それは彼を追った視線が必然と見上げた夜空……そこに浮かぶ満月のような、琥珀色をした双眸だった。

 暗いのにそれがわかったのは、彼の瞳がほのかに発光していたから。



「これ、借りるな?」



 若葉くんが私の手からあるものを抜き去る。



「本当の俺を、見ていてくれ」



 確信した。彼は……。



「それで俺とやり合うおうってのか?」



 若葉くんは、余裕の笑みで鉄の廃材をちらつかせる長谷川先輩と対峙する。

 その右手に握られているのは、私の竹刀。


 長谷川先輩は気づいていない。

 彼が、何者なのか。