そこには見慣れた顔があるのだけど、刻まれた表情は普段のようにやわらかいものではなく、凛と強い意志の込められたものだった。



「くそ……! どいつもこいつも調子こきやがって! もういい、俺が全部やってやる!!」



 長谷川先輩は立ち上がる際、落ちていた鉄の廃材を掴んだ。

 不安で肩をすぼめる私に、若葉くんは言う。



「心配はいらない」



 そして……なんと、おもむろに眼鏡を外したではないか。



「若葉くん!?」



 眼鏡を外せば秘密がバレる。

 若葉くんはそれを嫌がっていたはず。

 それなのに、目の前の彼はただ微笑むだけ。



「隠したままでは何も変わらない。大切だからこそ、君に見てほしいんだ」