「ナメてんのか」


「違う。――私の信じていた人が、そうだったからだ!」



 太陽と違って、月はいつでも姿を見せてくれるわけではない。

 でもいつだって夜空に浮かんでいて、孤独な闇を照らしてくれた。


 月は私の道標。

 母が言ったように、いつだって私を見守ってくれている。


 強く、凛と輝いていた。

 その輝きはこんなに曇ったものじゃない。


 あの人は、むやみに人を傷つけたりしない。


 ……そうだ、疑う必要がどこにある。

 ずっと信じてきたじゃないか。


 私が信じてきたものは、間違いではない。



「――紅林さんっ!」