――……


「あ――っ!」



 朝はうっかり若葉くんのほのぼのペースに巻き込まれてしまい、大事なことをすっかり忘れていた。

 そんなことを、お手洗いの帰りに思い出す。



「私のこと、口止めしなきゃ」



 授業後すぐだし、見つけるには時間もかからなかった。

 だけど目に飛び込んできた光景に、あんぐりと口を開ける。



「ねぇ、影薄いって言われたことない?」



 先客がいた。

 さっき若葉くんを査定していた女子たちだ。

 クスクス笑っている辺り、面白がっているとしか考えられない……んだけど。



「あはは。よく言われるんですよねー」



 本人も笑ってますけど。

 そんなサラリと返答していいの!?