「……ありがとう」



 少しだけ、抱き締める腕が強張る。

 若葉くんは、どうしてお礼を言われたのかわからないようだった。



「城ヶ崎から聞いた。ミブロのことを知ってて、私を守ってくれようとしてたんだよね」


「――!」


「でも大丈夫だよ。ミブロは悪い人じゃないし、私もそう簡単に誰かにやられたりしない。伊達に剣道やってないんだから!」



 黙って守られているのだけは、嫌。

 自分にもできることはあるのだと言ったつもりだった。


 若葉くんは腕の力をゆるめ、それから私の肩を掴んで、自分から引き離す。
 
 不思議に思い見上げた先で、彼は見たことのない真剣な表情を浮かべていた。