教室の喧騒。

 談笑が聞こえるその隅に、ぽっかりと穴の開いたような空間があった。


 周囲のにぎやかな風景とはまるで別世界。

 水を打ったように静かな……そこだけ忘れ去られたような空間。


 そこにはやっぱり、若葉くんがいた。

 彼は、自分の席に座って窓の外をぼんやり眺めている。

 辺りの楽しそうな声など、全然耳に入っていないみたいに。


 彼も独りだった。

 でも彼の場合は、私とは違った。

 独りなのに全然悲しそうじゃない。

 そう気づいて、私の胸は痛み出す。



「……若葉くん」



 振り向いた彼は、ふんわりと笑う。

 お陽さまみたいだった。

 すごくまぶしくて、その光は誰にも隠しきれない。


 心に恵みを与えてくれるのに、いつも独り、ポツンと空の真ん中に浮かんでる。

 与えるばかりで、自分から何も得ようとはしないんだ。