「はい、そういうことだから仲良くするように。若葉の席は……お、あったあった」



 先生が教室を見回すと、最後尾の窓際に座る私へと視線を寄越す。



「……へ?」



 まさかと思い右側を見れば、おあつらえ向きの空席がひとつ。



「じゃ、あそこ。紅林の横な」



 何でしょう、このベタな展開は。



「紅林さんの横だって。かわいそう」



 ……すみません、聞こえてます。

 でも、クラス中の哀れみの視線を受けていることに、若葉くんは気づいてない。



「隣だなんて偶然だね。よろしく、紅林さん」



 生きて帰れないな、あの編入生、と十字を切るクラスメイト。

 それに全然気づかないで、にこにこ笑っている若葉くん。

 彼らの狭間で、私は苦笑いを浮かべるしかなかった。