「紅林」



 昼休みになり、さすがに困り果てた私の前に現れたのは、なんと城ヶ崎。

 教室の出入り口に立つ彼は言葉を失う私を見、視線をわずかにずらす。

 その先を辿れば、同じように城ヶ崎を見据える若葉くんの表情があった。



「コイツ、借りるぞ」


「借りるって……じょ、城ヶ崎!?」



 若葉くんの漆黒の瞳が細められる。

 まるで無言の拒絶を表すかのようだった。

 察した城ヶ崎の表情も険しくなる。


 まずい。この場合危ないのは明らかに城ヶ崎だ。

 いつ感情的になるかわからない。


 慌てて止めようとしたけれど、彼はいたって冷静だった。