「紅林先輩は強くてカッコよくてお父さんみたいで、若葉先輩は優しくてにこにこしててお母さんみたいだなって思いました」



 ……「若葉くんお母さん説」は否定できない。

 私も実際そう思ったことがあるし。


 それにしても、私がお父さん?

 若葉くんに母性があるならば、不良の私には父性があるということですか……?


 キーンコーンカーンコーン。


 何とも言いがたい複雑な思案を、予鈴が中断させた。



「あ、わたし、次が移動教室なので失礼しますね。本当にお世話になりました」


「待ちな」


「はい?」


「またこんなことがあったら、私か若葉に言うんだよ?」


「……はいっ!」



 ホントに嬉しそうにお辞儀するから、私も誇らしく思いながら、桃ちゃんを見送った。