「わたし、結木桃って言います。覚えていただけたら嬉しいです!」 わぁ……可愛い名前。 桃ちゃんは身体の向きを変えると、若葉くんにもお辞儀をした。 「荷物を取ってくださって、ありがとうございます、若葉先輩」 「僕のことを知ってるなんてすごいな。よく見てるね」 もしかしなくても、これは若葉くんの冗談だ。 「こんな地味男の存在に気づくなんてすごいね~」という。 それが事実でないにしても、若葉くんには自覚がないわけで。 だからこんな風に返されるなんて夢にも思わなかっただろう。 そして私も。