「城ヶ崎、それ、竹刀……じゃあ!」


「今日から出る」


「ホントっ?」


「ぎゃあぎゃあやかましい女に助けられんのは、シャクに障るからな。勘違いすんなよ。お前に気を許したわけじゃない」



 そうしてしかめっ面のまま、私の横をすり抜けるんだけど。



「礼は言わん。――借りだ」



 ……城ヶ崎の姿は、廊下の向こうに消えていく。

 その背を見つめながら、心がほっこりと温かくなるのがわかった。


 彼が新たに背負ったものは、竹刀だけじゃない。

 優しさと強さ。

 それがあれば、どんなものだって守ることができる。


 いつもと変わらない時間は流れる。

 その中で少しずつ、色々なことが変わり始めていた。