ガラス越しに空を仰ぐ。


 夏とはいえ長居しすぎた。

 薄暗い空には一番星がきらめいている。


 遥か頭上で輝いているはずの月は……そもそも見たくもない。

 そういう主義なのだ。



「……ミブロ、か」



 僕がこの名前を知っていたと聞いたら、彼女は怒るだろうか。


 あんなに想われていた。

 だからついに言えなかった。

「彼が誰なのか、知ってるよ」……と。


 言えるはずがなかった。

 あの真剣な瞳が、僕に向けられていないと知れば。

 でも、いつまでもこのままではいられない。


 身を起こして歩き始める。



「ミブロ――お前の好きにはさせない」



 本当に大変なのは、明日だ。

 明日カタをつけられなければ、それで――