「……逃げられちゃったかな」



 苦笑をして、すぐ表情を引き締める。

 廊下の片隅に移動してディスプレイを確認すると、思った通りの名前が表示されていた。



「……もしもし。変なときにかけてこないでよ。僕? まだ学校なんだけど」



「普通」に出たつもりだったが、相手にはおかしく感じたらしい。



「らしくないって、そっちがこうするように言ったんでしょ。

 わざわざこんな時間にかけてくるなんて、何の用なの? ――父さん」



 すぐさま返ってきた答えに、頭を抱えたくなる。

「話したいから」だって?

 ほとほと呆れる。