「人ってのは……全員が全員、誰とでも仲良くなれるわけじゃねぇだろ。周りと打ち解けられないヤツだっているんだ……!

 そいつらの生き方を否定する権限があるほど、お前らは偉いのかよ!?」


「コイツ……!」


「私のことはどうとでも言え! だが腐った人間はいなくてもな、腐った心を持った人間なら、世の中腐り果てるほどいるんだよ!

 本当の意味で腐ってんのはどっちか、しっかり考えろっ!」


「調子に乗るんじゃねぇっ!」



 男子生徒の拳が振り上げられる。



「おいっ、紅林っ!」



 私には、抵抗するだけの体力がない。

 酸欠でフラフラする。

 ぼやける視界で振り下ろされる拳を認め、目をつむった。



「クソッ!!」



 城ヶ崎の声が聞こえた。

 それと、彼が駆けてくる音も。



(ダメ。殴っちゃ、ダメ……! お願いだから、来ないで!)



 一心に祈ったそのとき、屋内を一陣の風が吹き抜けた。