「……腐ってる人間なんか、いない」



 少ない酸素。話せばもっと逃げていく。

 だけど私は。



「城ヶ崎……手ぇ、出す……なよ」



 顔も動かせないし、目を合わせることもできないけど、私は城ヶ崎に笑いかけた。



「そりゃあ、性根の悪いヤツらはいるがな……そいつらも、そいつらなりに生きてんだ」



 私が先生に叱られたって知って、どうして言わなかったんだ、そんな筋合いはないって怒った。

 本当は優しいのに、不器用で強気な口調でしか人と接することができない。


 だから、独りを選んでいく。


 独りにならざるをえない寂しさを、私はよく知っている。