「俺たちに理解者は必要ない。全員が敵だ」



 彼の言葉が、やけによく聞こえる。



「友達だと? 笑わせる」



 握られる拳。

 私はもうすぐ起こるであろう出来事を理解した。

 予想通りに拳は引かれる。


 けれど私は動けなかった。

 それどころじゃなかった。


 城ヶ崎の拳が、速度をつけようとしたとき――私の頬を、雫が伝う。



「……っ!?」



 止められる拳の向こうで、瞳が戸惑い揺れている。



「何……やってんだ」


「わからない……けど、悲しいのかな? これは……」



 声はか細く、震えてしまった。