荷物と竹刀を抱え教室を出る。

 静寂だけが聞こえる廊下。

 茜に染まる窓辺に腕を組みもたれかかる青年には、見覚えがある。



「城ヶ崎じゃないか。部活は……」



 問いかけようとして、やめた。

 おもむろに顔を上げた彼が、異様な雰囲気を漂わせていたからだ。


 城ヶ崎は目の前まで来ると、無言で腕を突き出す。



「これは……私の。置き忘れてたのか? 悪い!」 



 危険信号を受信。

 慌ててランチバッグを受け取り、すすすーと横を通り抜けようとする。

 と、肩を掴んで引き戻された。


 ジトリと私をねめつける城ヶ崎は不機嫌だ。この上なく。

 心当たりは……すごくある。