「紅林さん、今すぐ僕とケンカしてって言ったら、できる?」


「……えっ、出来ないよそんなことっ!」


「だから、今はそれでいいんじゃないかな。どうやら僕には、紅林さんを怒らせることはできないようだし」


「えっと……?」


「人っていうのは、いつも笑っているわけにはいかないでしょ? ときには怒ったり、泣いたりすることも必要なんだ。

 だから紅林さんが本気で怒れる相手がいることは、大切なことだと思う」