真っ暗な中にただ独り。

 長い長い夜の記憶は、今でも鮮明に残っている。



「でも、夏の満月って明るいうちから見えるでしょ。だから見てると安心するの。

 ――それに、夏の満月には大切な思い出があるし」


「前にも言ってたね。その思い出って、憧れの人との?」


「……うん」



 ミブロと出会った夜も満月だった。

 だから、待ち遠しくてたまらなくなる。

 簡単に会えないとわかってはいても。



「紅林さんに想ってもらえるなんて、その人は幸せだね。妬けるなぁ」


「はいっ!?」



 若葉くんを見るけど、目の前には微笑みがあるだけ。