わけのわからない質問をしてきたかと思えば、急に駆け出す。

 人に物を拾わせておいて薄情な女だと苛立ちすら覚えた。

 だが、虚空に悪態をついたところで余計な体力を消費するだけだから、仕方なくアイツのランチバックを手に後を追った。

 そこで目にしたもの。



 ……何だ。


 何なんだ、あれは。


 寝ぼけるのは寝てからにしろ。



 一度は自分を叱咤したが、すぐに、目前の光景が幻などではないとわかる。


 そこには編入生と話す紅林がいた。

 だがいつもの仏頂面ではなく、気弱そうなクセして明るく笑う、そこらのヤツと変わりばえのしない女だった。


 何だ、やっぱりただの女じゃねぇか。


「最凶の不良」がただの女。そんなヤツに言いくるめられたのか、俺は。


 一度でも認識してしまうと、ふつふつと湧き上がる感情を抑えきれない。



「……クソッ!」